舞台「ボクの穴、彼の穴」。非日常?
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非日常? いいや!
日常にあるあるこんなコト、と感じた舞台「ボクの穴、彼の穴」。
ここは東京芸術劇場の舞台。
この空間に登場するのは、たった二人、
見知らぬ同士のボクと彼。
このふたり、舞台上ではセリフを全く交わさない。
それぞれの独白が交互に続く。
が、切り替えが絶妙、それぞれの独白が小気味良く繋がって、飽きさせない。
ここは穴の中、それぞれの使命を背負ってそれぞれひとりで悶える若い兵士の物語り。
独善的な思考が取り込む危険性を呟き、
そしてその危険性を溶かしていく人くさい物語りでもあった。
穴の中にそれぞれ独りで棲むボクと彼はお互いに、毎日一回銃口を穴の外に向ける。
バキューン!
・・・
バキューン!!
お互いの一発は、見知らぬアイツを、威嚇し牽制するため。
そして敵かもしれないアイツが生きていることを確認しあうため。
見えないアイツの姿、聞こえないアイツの息づかいに温もりを感じるため?
敵かもしれないアイツに愛おしさを感じて日々一発を交戦する姿が、どこか緩くて、可笑しい。
(イメージ写真下に続く)

ボクも彼も、大きな使命を背負って戦場に送り出されてきた。
重い使命感。
しかし、それ以上の孤独感と恐怖感。
互いに独りで戦い続けるボクと彼は、時に意識が一転する 。
「殺さなければ、殺される」
一気に緊迫感上昇。
アイツを殺るために、ボクはボクの穴を出る。
その時彼もまた、意を決して彼の穴を出る。
そして、二人はそれぞれアイツの穴を見つけ、アイツがいない穴でアイツのコトを知る。
ボクと彼は、独善的な思考の穴に落ちていたコトを知り、頑なココロを溶かしていく。
そして、ボクと彼は叫んだ!
「まず僕らだけでも、手を繋ごう」
独善的な思考、行為の危うさ。
あるある、日常にもある、こんなコト。
日々忙しくバタついている時ほど、独りよがりの穴に落ちていることがある。
周りの風景が一向に変わず違和感を持った時には、それまでの営みを一旦止めてみよう。
そして穴から外に出て、外の空気をスーっと吸って、外をズーっと眺めたい。
外に見る新たな風景は、新たに踏み出せる一歩になるかもしれない。
原作:デビット・カリ
訳 :松尾スズキ
脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:宮沢氷魚、大鶴佐助
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FP事務所 ネクストプレイン
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