芝居「烈々と燃え散りし あの花かんざしよ!」、実話の舞台化、凄い人生を垣間見た。
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『この舞台は、金子文子という実在の人物を題材したノンフィクションの作品である。』
そんな内容のアナウンスにより始まった舞台だった。
本人の獄中手記もあり、書籍化され、それに映画化もされていることを、芝居後に知る。
現在90歳超えてなお肉食で生命力旺盛な瀬戸内寂聴も、彼女の伝説を書いていた。
この芝居を観終えた時、どんよりとやるせない気持ちながらも、彼女の生き様に放心してしまう。
初めて耳にする名前。
彼女は、明治の終盤に生まれ、大正時代に朝鮮人(当時)でアナキスト(無政府主義)である内縁の夫と活動を伴にし、結果検挙され獄中にて亡くなった女性だ。
彼女の幼少時代、両親の素行がひどく、筆舌に尽くせない不遇の時代を過ごしたようだ。
極貧、虐待、、。
酒乱の父は家を出て、母は他の男と交遊、金銭工面のため娘(金子文子)を女郎郎屋に売り飛ばす算段をしたり、とか。
が、8歳の娘は売れなかったらしい。
ちなみにタイトルにある「花かんざし」は、母親が娘(金子文子)を置屋に売る直前に贈ったモノという設定だ。
この箇所が実話なのかどうか、わからない。
(イメージ写真下に続く)

無政府主義の男に惹かれ生活を伴にする中で、その実現に向け爆破・殺人を計ったらしい。
関東大震災の発生2日後、治安警察法(当時)に基づき夫と伴に逮捕。
大逆罪の極刑が言い渡され、その後恩赦により減刑されるも、彼女はその特赦状を引き裂き拒否したという。
夫とは別の刑務所に収容され、その後獄中で自死に至った、と伝えられている。
夫への感情は愛だったのか、
生の証しだったのか、
政府の否定、社会の否定、存在への否定を唱える同士(夫)への賛同だったのか。
彼女は、己の存在をいずれ消し去ってくれる同士を求め、それを信じ切ることで、
今今の生を鮮烈に実感しようとしていたのではないか。
こんな凄まじい物語を、新宿梁山泊が紫テントを出て、下北沢のすずなりホールで観せてくれた。
シライケイタ作、金守珍(きむ すじん/新宿梁山泊代表)演出。
金子文子役の水嶋カンナが凄かった。
怪演!
本舞台の最後のシーンに現れたメッセージ。
このメッセージが、金子文子の句なのか、作家の作文なのか不明だ。
散らす風
散る桜花とせんとかし
潔く吹け
潔く散れ
この時代に、このような題材の作品を観るとは思いもよらなかった。
今世の中では皆が自分ファースト、自国ファーストとして振舞おうと必死だ。
潔くなってはいけない。
潔ぎよさを目指してはならない。
皆が潔く振舞ったら、いつの間にかトンでもないことになる。
先のメッセージが反面教師的に響いてきた。
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FP事務所 ネクストプレイン
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