シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」、浮き立つ風景の下で繰り広げられる惨事!そして平穏。
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久方ぶりに観るシネマ歌舞伎は、やはり面白い。
平成最終月の今(2019年4月)映画館で見てきたのは、
2017年8月/東京・歌舞伎座で上演された演目だ。
後追いでネットで情報探索すると、
この演目、実は現代劇の雄:野田秀樹が坂口安吾の2つの小説を参考に新たに書き起こし、劇団「夢の遊民社」が初演したという。
この舞台作品を歌舞伎にて上演することを、中村勘三郎と約束していたらしい。
勘三郎旅立ちの後、その息子たちがその遺志を引き継いだ。
さて、開演。
縦3色の定式幕が開くシーンを銀幕で観る。
舞台のまん真ん中では、一本の巨木がピンクの花びらを茂らせていた。
満開の桜の木。
気持ちを浮き立たせてくれるような、すこぶる明るく華やかな空気感が満ちている。
本物の満開の桜があるかのように錯覚してしまう。
舞台美術に、それはもう感嘆!
(イメージ写真下に続く)

この風景が、時に蛇の世界に変わり、時に邪の世界へと目まぐるしく反転を繰り返えす。
その世界観を舞台上で先導したのは、
中村勘九郎・七之助兄弟と市川染五郎(現:松本幸四郎)。
耳男を演じた勘九郎。
舞台終盤に見せた、目を真っ赤にして見開き、汗と鼻水をたっぷり垂らしたクシャ顔。
その空気感は、親父の勘三郎にそっくりだ。
DNAは間違いなく親から引き継がれている、とつくづく思う。
そして、夜長姫を演じた七之助。
おっとりで妖艶な娘から邪鬼への変貌が、お見事。
観客席に座っていながら、変貌した後の邪鬼の声音(こわね)に身震いした程だ。
ライブの歌舞伎座では、役者の顔は遠目でははっきり観ることはできない。
が、ここ映画館のスクリーンでは、演者のドアップ顔が写しだされ、臨場感MAX。
これぞ、「シネマ歌舞伎」ならではの、ド迫力。
東京・歌舞伎座で公演された演目が、高精細の映像となって、ここ埼玉の映画館で楽しむことができた。
撮影から編集・配給・映写まで一貫してディジタル信号処理する高度な技術が貢献しているのだろう。
そして、エンディングに驚いた。
これ、歌舞伎?
エンディングには、まずオペラを思わせる楽曲が流れ、
そして、賛美歌(?)が花びらと伴に舞い、柔らかい空気となって劇場内を包み込んでいた。
野田版歌舞伎は、様々なジャンルの融合体であるかのようだ。
伝統芸能・歌舞伎は進化している。
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