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舞台「命売ります」。
ここに、人間ショーケースを観た!

原作は、三島由紀夫。
金閣寺など純文学作家だとばかり思っていたが、こんな少々滑稽なモノも書いていた。
この原作に、この演出あり。
演出は、ノゾエ征爾。
この舞台、存分に楽しめた。

舞台は漆黒の暗闇。
そして唐突に、パーン。
幕開け、いきなり明転、強烈にまぶしい!
舞台奥、2階建てのショーケースが目に飛び込む。
各階に8ドア(だったか?)、2階×8ドアの16ブロックにそれぞれ一人が直立不動。
まばゆいばかりの光線が照射されていた。
人間ショーケースに陳列されているモノ、16人の面々。
この面々、これから始まる人生双六(すごろく/ゲーム)に参戦する駒(コマ)として、ドア内に待機していたのだ。

舞台奥のショーケース前は、
家庭用の食卓テーブルより一回り大きい4つ足の台が、所狭しと整然と何台も並んでいる
真上から見たとすれば、大きな四角いタイルが貼られた床面のようだったろう。
このタイル一枚一枚は、人生双六の一コマ一コマ、ひとマスひとマスでもあったのだ。

(イメージ写真の下に続く)

物語が始まり、ショーケースの駒達はドアを出て人生双六の盤上へと順に繰り出してきた
「命を売る男」駒ひとつ。
次々にドアを出る駒は、「命を買う客」とその取り巻き。
それぞれの駒は、人生双六を行きつ戻りつ、右往左往。

「命を買う客」は生きるコトを渇望し、他人の命を買うことで己の命を長らえようとする。
が、買ったその命を自分の代用品とすることができない。
偶然性も加わり、結局自らの命を長らえるコトなく、
計らずも無残に皆ことごとく人生双六の盤上からドロップアウトしていった。
なんとも滑稽。
何事も、他力では思い通りにいかないものだ。

一方、「命を売る男」は双六の盤上に生き続ける。
己の命を売っても売っても、己の命を落とせない。
盤上から消えた「命を買う客」を踏み台にして、生き続けていた。

そしてラストシーン。
「命売ります」と息巻き命落とすコトを願い続けていたハズの男は、警察に飛び込み救命を願い出る。
はーあーー!
何てこった。
こんなオチのある物語だった。

生きたくても生きられない命。
死にたくても死ねない命。
死にたくて「命売る」と決意した男が、舞台終盤に向かうにつれ、ココロなしか活き活きとしていた。
「死」への決意が、「活」きる力を膨らませるのだろうか。

三島由紀夫の原作が、こんなふうに舞台に鮮やかに蘇った。
人間ショーケースと双六盤で演出された不思議な世界を存分に満喫させてもらった。

原作:三島由紀夫
・演出:ノゾエ征爾

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最終更新日2020-10-12
Posted by
芝居

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