公示地価データの読み取りにも、「羅生門(らしょうもん)効果」があった。
今から概ね1年ちょっと前。
2017年3月に国土交通省から、同年1月1日時点の公示地価が公表された。
新聞にその内容を見たが、違和感を覚えたことを思い返す。
今思えば、これも「羅生門効果」だった。
2017年3月22日の日経新聞。
当日の新聞は、2部構成。
通常の第一部と、公示地価特集が組まれた第二部。
公表された公示地価に対するヘッドライン(大見出し)は、同日の同一新聞ながら第一部と第二部で異なっていた。
同一の素材から発信されたヘッドライン、そのヘッドラインから受け取る印象は、随分と異なる。
新聞の読み手である情報の受け取り手は混乱してしまう。
そんな混乱させるヘッドラインを付記するのは如何なものか、と素朴な疑問を持ったことを、思い出した。
◆第一部1面のヘッドラインは、
・住宅地9年ぶり上昇
◆第二部1面のヘッドラインでは、
・住宅地 下げ止まる
(日本経済新聞:20170322:第一部の一面)

(日本経済新聞:20170322:第二部の一面)

同日の同一の新聞に登場した2つのヘッドラインの表記は異なり、読み手の印象を変える。
[上昇]と、[下げ止まる]
何故だろう?
当然に2つの記事が対象とした原データは同じだ。
住宅地の公示地価データを時系列で、確認してみたい。
第一部1面トップに掲載された住宅地の全国平均の変動率(%)は以下のとおりだ。
(1)2016年は、対前年(2015年)比で▲0.2%
(2)2017年は、対前年(2016年)比で+0.022%
この2つの変動率(%)の読み取り方の違いが、表現を変えていたこに気が付く。
◆読み取り方【A】⇒ 第一部の「ヘッドライン(大見出し)」に反映
注視された要素は、前年比で下降(▲)か上昇(+)か。
(1)2016年まで前年比下降(▲)が続いていた
(2)2017年は、前年比で上昇(+)に反転
⇒変動率の反転が注視され、2017年は「上昇」
◆読み取り方【B】⇒ 第二部の「ヘッドライン(大見出し)」に反映
データの読み取りは、前年比・変動率を小数点以下一桁にて。
(1)2016年は前年比で▲0.2%で、それまでも下降が続いていた
(2)2017年は前年比で+0.0%で変化なし(=前年比ゼロ)と判定
(参考:小数点以下3桁では、+0.022%)
⇒2017年は、前年比ゼロとして長年の「下げは止まった」
データの羅列から、読み手が読み手目線・感性で読み取りそれを発信した時に、それは「データ」から「情報」へと変化する。
同じデータに基づいて発信されたハズの「情報」は、発信者の目線・感性によって異なる表現となり、発信先である受け手の印象が異なるのは当然だ。
先の記事では、「羅生門効果」を
あるひとつの事象(出来事)に対して、人それぞれが認識している事実を主張すると矛盾してしまうという現象。とした。
今回の事例のように、
あるひとつのデータ群が、異なる目線で分析・評価され発信されれば、受け取り手には異なる印象の情報として認識され、受取手を混乱させる。
これも「羅生門効果」ではないだろうか。
これも、「羅生門効果」だ。
情報の受け手が原データに接することもなく、他人の評価のみを聞いていれば、他人の目線に依存してしまうことになる。
それを予防するにはどうしたらいいのだろう。
是非、出典(原データ)の確認したい。
出来うるだけ出典を確認したい。
ネットではなかなか出会えないが、出来れば、原典を確認したい。
自らが獲得した1次情報でなく、第3者が獲得した情報を再利用した2次情報の取扱いは注意をしたい。
そしてその時は、発信者が付加した印象・感情は分別して、読み取りたい。
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/ FP事務所 ネクストプレイン /
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